今回のエンジニアブログは、根尾 IoT Bootcampの2日目をお伝えします。1日目の様子は、こちらをご覧ください。
ハンズオン
気持ちよい晴天のなかDay2が始まりました。
プロトタイピングにはいるまえに、まずは現実どのようなことがmyThingsを通じて実現できるのかについて、ハンズオンを行いました。
今回の技術的な仕掛けとして、センサーやボタンなどの機能をmyThingsを経由させて、どのようなことができるかを実際にやって理解してもらうことにしました。
IoT関連のプロトタイピングですが、以前と比べるとクラウドサービスなどの進化でやりやすくなったものの、依然ソフトウェア、ハードウェア様々な知識を必要とします。
エンジニアだけでなく、地元のかたやデザイナーのかたなど、多くの方がかかわることでイノベーションをおこすとりくみだからこそ、レイヤーを俯瞰しつつ、チームでイメージをあわせるために、ベースの技術でどのようなことができるのかを、チーム全体に知ってもらうことが重要だと考えていました。
今回は、トリガーデバイスさんとIDCフロンティアで後述するkonashiやSensorTag, iBeaconに限定してmyThingsへ接続が簡単にできるアプリを準備することで、企画の方でも感覚的にツールでできることを理解でき、フロントサイドやデバイスサイドのエンジニアでもサンプルを改変することでプロトタイプしやすい環境を準備しました。
konashi
ユカイ工学の提供しているフィジカルコンピューティングのプロトタイピングキットです。
konashi.jsというアプリをつかうことで、JavaScriptでデバイスを制御できるため、ハードウェア系の知識が少ないWeb系のエンジニアでも実装が容易になる点が魅力です。サンプルとしてIDCFチャンネルサーバ(myThingsと自作電子機器をつなぐためのサーバ)へデータをおくるコードも提供しているので、簡単な連携はスマホのみでできるようになりました。
SensorTag
TI社のセンサーと通信モジュール、スマートフォンアプリがセットになった開発キットです。温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計などのセンサを内蔵しています。今回ハッカソン用の専用アプリを準備し、BLE経由で取得したデータをスマホ経由でIDCFチャンネルサーバにデータをあげます。
おもにセンサーから取得したデータをトリガーにして、通知やアクションをする想定で環境を準備しました。
なお、今回利用したCC2541はすでに販売が終了しており、新しいモデルがでています。
iBeacon
Apple Inc.の商標で、位置や近接の検出技術です。近接を検出することで通知やアクションをするような利用が想定されると考え、スマートフォンよりIDCFチャンネルサーバへ通知をおくるアプリを準備しました。
利用するインターフェースを極力スマートフォンに絞り、ユースケースもセンサーやボタンからの通知に絞ることで、1時間程度でひと通りのハンズオンができました。
短時間でたくさんの技術情報をインプットするのでなく、大まかな可能性を伝えることで、むしろチームとして発想を促進できたのではと感じています。
アイデアスケッチ
実際に誰がどのようなときにどんな体験や効果を有無かをイラストにしてだしあい、まわりのアイデアやコメントを参考にアイデアを具体化していくために”アイデアスケッチ”という手法を使いました。IAMAS小林先生のリードのもとセッションが進みます。
アイデアスケッチについてはこのサイトなど参考になります。
まずは個々で浮かんだアイデアをイラストにします。ポイントになる部分(利用者がタッチする部分など)を赤で強調し、全体を太線でかくことでアイデアをアイコン化してその後も頭にイメージが残りやすくなるそうです。
利用する人や物の働いている状況を切り取ることで、実際にプロダクトがどんな形で使われて、効果を発揮しているかを描くことになるので、アイデアのイメージやポイントが描く人にとっても、まわりの人にも伝わりやすくなりました。
その後アイデアの共有を行います。一回のアイデアスケッチで一人2,3個のアイデアがでるのですが、スケッチがあるので着想のポイントが伝わりやすく、スムーズに共有がすすみます。
一方で多様な視点があるので、アイデアを磨くきっかけにもなります。たとえば、イノシシやシカの肉や料理提供のアイデアには、現地の方から供給量が読みにくかったり、運搬が大変だったりで商業的に扱いにくい現状などのインプットがありました。
今回は、アイデアスケッチと共有を2回おこないましたが、1度目のアイデアを参考にして2度目をだすなどして、アイデアを深めたり掛け合わせる様子が見られました。
最終的にでてきたアイデアから投票を行い、多く投票が集まったアイデアのなかで自分の興味がある題材にわかれて、プロトタイピングのチームをつくりました。
プロトタイピング
プロトタイピングは実質3時間程度でしたが、各チームかたちにできる部分まで実装ができていました。各人得意な領域が違うので、プログラムをする人から、ダンボールで模型をつくる人まで相談しながら進めていました。
また、当初想定していた実装方法では時間が間に合わず、実装方法をかえるなども、短い時間ですが、チームで連携してプロトタイピングを進めていました。
Team A NEO CHANNEL
根尾の中心である駅や各種施設にボタン付きの掲示板を設置をし、観光客に地元のかたをガイドとしてマッチングする仕組みです。ボタンで提供することで、普段スマホなどを使わないような地元の人でも利用ができるとこがポイントです。
写真右に掲示板のモックがあり、掲示板上のボタンを押すと、お店などにいる地元の人に通知が行きます。通知をうけた方がOKの返事をすることで、マッチングされる仕組みです。
通知されるほうの媒体やタイミングなど検討していく点はありますが、掲示板とボタンという単純な仕組みを入り口にする点におもしろさを感じました。
一方、こういった観光系のサービスを継続的に効果を確認したり、ビジネスとして町がつづけていくことを考えると、ボタンをおす方の情報をどのようなかたちで取得すると利用者にとっても、提供者にとってもいいかという点で、議論が活発に行われました。
ボタンやスイッチのような単純な仕組みとネットの組み合わせですが、案外未開拓のように感じています。
Team B 水監視と小水力発電
根尾では、きれいな沢の水を利用して暮らしており、現在も重要なライフラインとなっています。
この水の監視を当番制で行っており、当番時には時間ごとに現地に行っています。
町の中心からは車で10ぷんくらいかかるところに水場があり、確認には当然手間がかかります。
▲水場の様子、水が一定量あると水が流れる仕組みになっている。
そこでこのチームでは、取水に異常があったときだけ通知するために、水の流れ出す場所に加速度センサーつきの水車をつけ、データをもとに水車が停止したと判断するとメールで通知を行う仕組みを作成しました。木々のなかの薄暗い場所に位置しているので、太陽光でなく水で発電しエネルギーを溜め、長期間利用するイメージでしたが、発電部分はプロトタイプからは除外しました。
実際に水で発電するには、機材の耐久性、水の量による誤動作や過剰に蓄電した場合の制御など課題も多いのだと思いますが、すでに見えている身近な課題に答える内容でした。
Team C 熊よけ鈴
熊よけ鈴をiBeaconをつかって、より広範囲に熊に人の居場所をつたえる。
設置している鈴が、iBeaconを利用して、スマホを保持している人が熊出没地帯に近づいてくると、設置しているユーザの位置におうじてサーバが反応し、各々の連動してなる仕組み。
熊の遭遇情報を集めるきっかけにもなる。
こちらはIDCFチャンネルサーバをメッセージブローカとしてつかって、スマートフォンとサーボモータを設置したコンピュータの通信を仲介した構成になっています。
ハッカソンでもたまに見受けられますが、IDCFチャンネルサーバは、WebSocketやHTTP, MQTTをブリッジできるため、myThingsの利用はしなくても、プロトタイプには有用だったりします。
最後に
課題の対応ありきでフィールドワークや課題の分析を通じて、チームごとにプロトタイプまでを行うことができました。
フィールドワークを通じて根尾への関心が強くなり、根尾のかたや参加者のかたとのネットワークができ、町に関心をもつ多様な人を結びつける場としても効果的な場になったように感じました。企画系のかたは今後の仕事上のアイデアにしたり、エンジニアのかたはいままで知らなかった分野の知識や可能性などをきづくきっかけになったのではと思います。今回のワークショップを通じて引き続き対応を続けるものもでてきており、今後の展開が楽しみです。
また、IoTは企業が先行して活用をすすめる分野ですが、ハードウェア、ソフトウェアともに利用がしやすくなってきており、身近な課題を個人やチームでDIYできるような環境や手法が整備されれば、IoTの活用シーンももっと広まってくるのではという期待を感じました。
最後に、今回のワークショップが成功した大きなポイントは、現地で準備や情報提供のご対応を頂いたり、様々な参加者のかたが各々の意見を積極的に出しつつ、尊重してコミュニケーションをとっていただいたことがあると思います。あらためて感謝です。
IDCフロンティアではワークショップやハッカソンでのmyThingsの活用をサポートをしています。ご興味のあるかたは、お気軽にお声掛けください。
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