IDCF テックブログ

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5分で疑似体験!ITエンジニアが自作IoTデバイス制作に初チャレンジ!

IoT元年と言われる昨年から今年にかけ、IoT関連の製品・サービスのリリースでにぎわっています。ハードウェア・スタートアップも増え、俄然、自作デバイス(電子工作)がカジュアルな雰囲気を醸し出し、興味をお持ちの読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

※IDCFクラウドも御多分に洩れず、7月に、ヤフーが提供する「myThings」に自作デバイスを接続できる「IDCF」チャンネルを公開。下の写真は、スイッチサイエンス社が販売する「myThingsをはじめようキット」。

今回のエンジニアブログでは、自作IoTデバイス制作に初挑戦したITエンジニアの方へのインタビューを敢行!その時何が起こったのか、つまびらかにしたいと思います。これからチャレンジしよう!というみなさまのヒントになれば幸いです。

スイッチサイエンス myThingsをはじめようキット

 

ライティングを担当するのは、非エンジニアのサービスディベロップメントグループ渡邉です。気がつけば、インタビュー2割、主観8割の記事になっておりましたので、ぜひ感想やご意見をお寄せいただければ幸いです。(@idcfrontier)

[序章]

・主役

今回インタビューに応じてくださったのは、Webシステム開発を手がける株式会社ドロップシステムの代表取締役社長の大井航平さんです(写真左・写真右はインタビュアーのR&D室長 大屋誠)。

大井さんと大屋さn

大井さんは社長の肩書きをお持ちですが、コードをガリガリ書く現役のエンジニアさんでもいらっしゃいます。アプリやサーバーサイドの開発を手がけられ、腕にはスマートウォッチが光るガジェット好きです。

・経緯

大井さんはこれまで電子工作未経験でしたが、同僚にM2M関連のビジネスを手がけ、ハードウェアを自作している開発者がいらっしゃるため、ずっと自作IoTの分野が気になっていたそう。「今度のイベントで、myThingsについて発表しようかな…」と発言したが最後、しばらくしてIDCFから、「myThingsをはじめようキット」が、「レンタル」と大きく書かれて送りつけられてきました。特に手がかりもなく、これで「やってみた」的な発表をする状況に追い込まれてしまった大井さん。無情にも闘いのゴングが鳴り響きます…!

[Round 1 電子工作の世界へようこそ!]

・電子工作のお作法がわからない…

開発者でガジェット好きな大井さんでも、「myThingsをはじめようキット」を目に前に、悩んだそうです。「myThingsをはじめようキット」には、Rassbery Piと各種センサーなど電子工作に必要なハードウェア、パーツが一通り揃っています。が、ウェブ系の開発者には、何をどうするのかお作法がわかりません。

悩み抜いた末、まずはRassbery Piに関する本を読んだとのこと。

これは、自作IoTデバイス界隈ではよく耳にするお話!ハードウェア、プログラム、サーバー、それぞれの知識が必要になるIoT分野は、いずれのジャンルのエンジニアにとっても、新しい分野の勉強が必要になるといいます。だからこそ、この世界が輝きを持って、エンジニアの心を捉えて止まないのかもしれません…!

さて、電子工作のお作法を本で学んだ大井さんは、パーツを知り合いから借りたり、通販で購入したりします。電子工作のパーツ、というと、私のような素人には、秋葉原あたりでしか売っていないのでは?と思ってしまいますが、イマドキは大手通販サイトでも、各種センサー類などが簡単に手に入るのだそうですよ。

→とっかかりは、本を読みましょう!

・Lチカ、だけじゃない!Rassbery Piでここまで遊べる!

教本とパーツを手にした大井さん、Rassbery Piとさまざまなハードウェアを組み合わせ、とことん遊び尽くします。大井さんのチャレンジの”一部"は下記の通り!お写真は、大井さんにお借りしました。

超音波測距

測距


超音波距離センサモジュールを使って超音波で距離を測ることができます。2つの突起部分の片方はスピーカー、片方はマイクとなっています。スピーカー側から出た音が、物体に当たって跳ね返り、マイク側が拾います。受信するまでの時間に、音速をかけると、距離が出る、というわけです。

LCD

LCD


LCDは何の略かというと、liquid crystal display…はい、「液晶ディスプレイ」です。身近な液晶ディスプレイですが、おや…?こちらは、ケーブルの口がありません。なんと、Rassbery Piとピンで直挿しです。信号を制御するプログラムを書き、コンパイルする事で、初めて文字が出力されます。「コンパイル」って、新鮮な響き…!

PWM

PWM


Pulse Width Modulationの略です。パルス幅変調。パルス幅を変調させて、何をするのか?そう!これが言わずと知れた「Lチカ」です!一定周波数のパルスで、LEDをオン・オフさせてチカチカさせます。単位あたりの点灯時間を調整し、人の目から見た明るさも変えることができます。「無駄に遊べる」とは大井さんの弁。Lチカ、とっても楽しいようです!

Hover

HOVER

簡単なハンドジェスチャーを認識するセンサーです。指でのジェスチャーやタッチ操作を、電気信号に変えて、Rassbery Piで計測・測定します。大井さんによれば、Hoverでドラムプレイをするデモがあったとか!人の動きのセンサーというと私たちにはKinectなどが身近ですが、Hoverはシングルボードコンピューターでライトに利用できるのがいいですね。

臭気センサー

臭気センサー


おならを計測しようと、意気揚々とRassbery Piに、臭気センサーを接続した大井さん。しかしながら、ご友人からもらったこの機種は、高い精度でにおいを測定しようというもの。おならであっても、正確にパルスを発生させて数msで計測しようとするため、とてもRassbery Piの手に負えませんでした。「もっと簡単なセンサーもあるみたい」と大井さん。「いままでで一番すごい屁のランキングを作りたい」と志を貫くべく、継続して情報収集中です。

温湿度気圧計

温室度センサー


温室度気圧計、そう、myThingsをはじめようキットにも入っているんですよね…myThings…って、大井さん!myThingsの話はどこにいったんですか!?

ここまでIDCFクラウドの仮想マシンを「無駄に課金させていた」と白状した大井さん。上記以外にも、さまざまなセンサー、パーツをRassbery Piにつなげていたそうです。さあ、そろそろmyThingsをはじめましょう!

→電子工作って、相当楽しいみたい!

[Round2 インターネットの壁]

電子工作の世界を思うがままに楽しんだ大井さん。ウェブ系の開発者ですから、ここからが本領発揮!さまざまなツールと電子工作を連携させたプログラミングをしようと、「IDCF」チャンネルを通じて、myThingsにつないでいきます。

img_iot_connect

難なくmyThingsに ログインし、IDCFクラウドもさっと立ち上げ、「IDCF」チャンネルの認証を早々に済ませます。このあたりのセキュリティを考慮したポートの設定はお 手の物…!

ポート

(引用:大井さん発表資料)

しかし、ウェブ系の開発者の大井さんであっても、一筋縄ではいかないポイントがありました。

・ドキュメントの言葉がわからない

「IDCF」チャンネルの公式ドキュメントを読み始めた大井さんですが…

ウェブ

「『トリガー』って何?『発火』とは!?」これは新IT用語の基礎知識でしょうか、ドキュメントの言葉がさっぱり頭に入ってきません…!「IDCF」チャンネルのページを目を皿のようにして探しても、答えは見つかりません…。
そこで開発者の大井さんは、Githubで公開されている「IDCF」チャンネルのソースコードを解読しはじめます。処理をフロー図に起こした上で、「『トリガー』ってこういうこと…!『発火』ってPushのこと!」と理解した上で、プログラムを進めることとなります。

ドキュメントが頭に入ってこない…というのは、はじめての自作IoTデバイス制作のチャレンジにおいては、①新しいジャンルなので言葉が定まっていない、②自分の分野外の言葉に触れる必要がある、ため往々にしてあることなのかもしれません。IDCFの制作側も「さまざまな専門分野の読者がいることを意識せねば…」と反省し、ドキュメントを修正したのでした。

・ブラックボックスの功罪

「IDCF」チャンネルは、ユーザーの方にサーバーサイドの動作を意識させず手軽に使えるよう、Dockerコンテナに必要な機能をまとめています。が、ウェブ系の開発者の大井さんは「自分の考えていることが実現できるのかわからない」と、時間のゆるす限り、ソースコードを読み、プログラムを実行し、どういう処理が帰ってくるか確認を進めるのです。

大井さんのテスト1

ふむふむ〆(._.)

大井さんのテスト2

((φ( ̄Д ̄ )ホォホォ

大井さんのテスト3

φ(▼ー▼キ) メモメモ

検証は続きます。時間をかけ、丁寧に仕様を解読する大井さん。ブラックボックスにしたツールは、専門外のユーザーには使い勝手がよい反面、専門知識があるユーザーにはカスタマイズが効かないので面白味が半減しまうようです。

しかし、時間は有限です。発表の日が目前に迫り、とりあえず公式ドキュメントのサンプルコードを実行。温室度センサーのデータをMQTTで「IDCF」チャンネルに送信し myThings経由で、slackに投げたところまで動作確認を終えた大井さん。「時間がなかった」と消化不良のご様子。

モノがインターネットにつながることを「体験」するだけならやりやすいのですが、自分の構想を実現しようとすると、

①自分の専門外の分野のインプットする、②仕様を解きほぐしながら進める、ため、どうしても一定の時間は必要になりそうです。

→どっぷり取り組む時間が確保できたら幸せ!

[まとめ - 余暇の時間でIoTに取り組むには?]

大井さんへのインタビューを終えて感じたことは、電子工作は歴史があり比較的初心者でもカジュアルに楽しめるものの、インターネットにつなごうとするとまだ情報が少なく試行錯誤が必要である、ということです。個人が貴重な休みの時間をつかって「IoT」に取り組むとしたらどうしたらいいのでしょう?

それは、近年、国内外で成功を収めるハードウェア・スタートアップに学ぶところがありそうです。彼らの勝因は、圧倒的なスピー ド感!大手メーカーが不可能なスピード感で開発を進めることで、研究開発費を大幅に圧縮し、数千ロットの生産で投資を回収できる。そこにスタートアップは大手に勝てるニッチな市場を見いだします。 彼らは専門外のパートナーを見つけることに長けていると同時に、ハードもアプリもサーバーも、既存のツールをうまく組み合わせて開発を省力化します。

しかし、ツールを使うにあたり、現状、個人ユーザーが、日本語で情報を探すのはなかなか困難な模様です。英語であれば、海外はIoTの分野が数年進んでいますから、情報量は格段に増えます。英語が得意な方は、ぜひ海外のサイトにあたってみてください。

日本でも、自作IoTデバイスにチャレンジする人が増えています。相互の情報共有を進めることで、今後、敷居はさがっていくでしょう。「自作デバイスをmyThingsにつなごう」というFacebookグループもありますので、ぜひ参加してください。読者のみなさんが、Facebookグループで専門外のパートナーを見つけて、ハードウェアで起業する、なんて展開を夢見ています!

[参考サイト]

興味をもたれたエンジニアの方に、日本語で自作IoTデバイス制作の情報が得られるサイトをご紹介します。

「スイッチサイエンス」
https://www.switch-science.com/
電子工作用の電子部品を扱う通販サイト。海外サイトの日本語訳をブログで配信したり、はんだづけカフェの運営など、意欲的に日本の電子工作人口を広めています。「myThingsをはじめようキット」の販売も。

「Make: Japan」
http://makezine.jp/
出版社のオライリーが運営するサイト。電子工作に関するニュースや、利用例などを、ほぼ日次で配信しています。

「Device Plus」
http://deviceplus.jp/
半導体メーカーのロームが運営するサイト。電子工作やエンジニアライフにまつわるネタ、ニュース、イベント情報などが配信されています。

「MONOist」
http://monoist.atmarkit.co.jp/
アイティメディアが運営する組み込み系に特化したニュースを配信するサイト。産業材向けのニュースが多い中、「ラズパイ2で遊ぼうぜ」「電子工作“超”入門」といった連載があります。

「TechCrunch」
http://jp.techcrunch.com/ガジェット/
テクノロジーメディアのTechCrunchも、ガジェッド系のニュースが増えてきています。「ガジェット」タグの記事が数日に一度更新され、最新のツールや組み合わせアイデアなどを得ることができます。

※本記事は、ユーザーの方へのインタビューおよびIDCFクラウドMeetupでの発表資料をもとに、ライターの全面的な主観で再構成し、大幅に加筆したものです。

(取材日:2015年9月4日)

サービスディベロップメント
ライター紹介:サービスディベロップメントグループ 渡邉
IoT大好き!だけどLチカはできません!
流行モノが変わるたびにプロフィールの「趣味」欄が変わるアイドルに憧れ、それを愚直に実践しています。
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