IDCF テックブログ

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クラウド・データセンターを提供するIDCフロンティアの公式テックブログ

たまには「デザイン」の話を

たまには「デザイン」の話をしたいと思います。
IDCFクラウドのUX/UIデザインを担当している小林です。

IDCFクラウドに合流してから、試行錯誤の毎日でしたが、ようやくブログ記事をかけるまでネタを集められるようになってきました。
当社では社名からもわかるように、常に新しいことを開拓する精神で働いています。 開拓地には流れ者があつまる酒場があるように、飛び入りで参加したものを懐深く受け入れてくれる文化もあります。 まずは流れ者のデザイナーを受け入れてくれた仲間たちに感謝したいと思います。

デザインとは設計である

唐突ですが、みなさんは「デザイン」のことを中国では「設計」と書くことをご存じでしょうか。
「デザイン」と聞くと、絵や感性の分野だと思われがちですが、「設計」と聞けばなんとなくイメージがわくのではないでしょうか。さらには、「デザイナーはデザインする人。」と「デザイナーは設計する人。」だとどうでしょうか。より何をする人か明確になりましたよね。

では、私は何を設計しているかというと、IDCFクラウドはWebブラウザ越しで使うプロダクトですので、画面(GUI)の設計をしています。
画面設計ができるエンジニアであれば、仕様書を見てすぐに作業に取りかかることができるのですが、複数人で作業をすると認識の共有が不可欠になってきますよね。
GitHubのissueやSlackで円滑にコミュニケーションできる人でも、頭の中の設計をアウトプットするのはとても大変なことだと思います。さらに、画面設計が苦手なエンジニアならなおさら外部にまかせたいと思っているのではないでしょうか。
UI/UXデザイナーは、そんなエンジニアの悩みを解決するために存在します。

UXは評価基準である

チームに合流して、はじめに戸惑ったのが「なぜこの画面設計になったのか」を説明することでした。例えば、「仮想マシンを作る」という要件を画面に起こしたとき、チームメンバーが10人いれば10通りのアイディアが発生します。

デザイナーが次から次へと画面設計しても、みなさん納得しないわけですね。
ですので、都度コンセプトやユーザー属性など、全て逐一説明する必要がありました。
しかも、既存のUIとの融和性も考慮すると自分が説明したものに矛盾が発生してしまい、メンバーからの信用もなくなってしまいます。
このようなことを繰り返していると疲弊するだけですので、思い切って時間と人手を借りてユーザーエクスペリエンス(UX)ガイドを作成することにしました。
結論として頑張ってよかったと実感しています。
具体的には次のような効果がありました。

  • デザイナーが何を考えて設計しているのか明確化された。
  • メンバー全員が同じ認識で仕事に取り組むことができるようになった。
  • メンバーがこだわりを持つようになった。
  • 画面設計を評価できるようになった。
  • 画面設計の改善につなげられるようになった。

UXガイドと聞くと、お客様へのメッセージであって、開発者には関係ないのではと思われる方もいるかもしれません。
実はUXガイドとは、自分たちが作るプロダクトの目標であって、評価する基準でもあるのです。

やってみる

私は何かを作らなければならないとき、どんなものでもそうですが時間をかけずにとにかく手を動かします。それから上司や担当者に相談しにいきます。半日ほどで作ったものを見せるので、だいたいは渋い顔をされるわけですが、内容に対して何か言われても、積極的に拾いに行く気で挑みます。

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はじめに書いた図です。
「心」「思考」「五感」「環境」の4つのカテゴリーに分けて考えました。1つのカテゴリーごとに5、6つのガイドを考えました。抜粋して紹介します。

  • お客様が、安心して利用できる。
  • お客様が、人にも勧めたいと思える。
思考
  • お客様が、学習しながら利用できる。
  • お客様が、直感的に利用できる。
五感
  • お客様が、見やすい大きさで表示する。
  • お客様が、タッチパネルでも操作できる。
環境
  • お客様が、様々なPC、ブラウザでも使用できる。
  • お客様が、どこにいても利用できる。

UXガイドを人に受け入れてもらえるようにするにはとても大変です。さらに、こだわりが強いチームメンバーにも受け入れてもらわなければなりません。

そのためにも各分野からメンバーを集めることにしました。当社の場合は、ブランドマネジメント、データセンター、インフラ、バックエンド、フロントエンドといったように、本部をまたいでチームをつくりました。

True user experience goes far beyond giving customers what they say they want, or providing checklist features. In order to achieve high-quality user experience in a company's offerings there must be a seamless merging of the services of multiple disciplines, including engineering, marketing, graphical and industrial design, and interface design.
引用:ニールセンノーマングループ https://www.nngroup.com/articles/definition-user-experience/

プロジェクト化する

プロジェクト化するにあたり、スケジュールと成果目標をつくりました。
スケジュールは3ヵ月の日程で、ワークショップを2ヵ月間、週1回1時間のペースで行いました。

  • 9月中 UXガイドプロジェクトキックオフ
  • 10月初旬までにメンバー収集
  • 毎週1回のペースでワークショップを開催
  • 11月末までにUXガイド コンセプト&項目の大枠完成
  • 12月末までにUXガイド完成

振り返ってみると、ワークショップはうまく機能しなかったので反省することが多かったです。メンバーで意見を出し合うことは2、3回ほどで終わってしまうのと、まとめることに手間取り、なかなか進めることができませんでした。
また、数を重ねると参加率が下がるので、シナリオを完全に決めてから短期集中で行えばよかったと感じています。さらに、ダレてくるとどうしても散漫になります。私たちはなんども脱線してしまい、目標目的を見失いました。
正しい道筋に戻るためにも目標目的はしっかりと持つべきでした。

課題を洗い出す

ワークショップで始めに行ったことは、私たちの課題を洗い出すことでした。UXは「お客様」視点と考えがちですが、まずは私たちの業務改善が、お客様にとっても良くなることだと考えたからです。
課題の洗い出しでは、主務だけを考えずに会社の仕組みなど広範囲に考えることが肝心です。特に同じ業務や同じ部内のメンバーだけで話し合うと視座が低くなり課題が偏ってしまいます。これは本当に他本部からメンバーを集めてよかったと感じました。

課題の洗い出しが終わったら、課題から解決したときに生まれる効果でカテゴリー分けを行いました。さらにツリー化し、当社のスローガンである「未来をささえる、Your Innovative Partner」から連なる形でまとめました。

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メッセージを作る

UXガイドは開発メンバーに受けいれてもらえるために、わかりやすく、覚えやすく、明確でなくてはなりません。課題をまとめることによって見えて効果から切り口を見つけメッセージ化します。私たちは「快適」「前進」「身近」の3つにまとめました。

(お客様が)(私たちが) より快適に(Constant)
  • 体験の障害になるようなことはしません。
  • コストがかからないUXを実現します。
  • エンジニア目線で魅力的なサービスを作ります。
  • UIで情報を提供します。
(お客様が)(私たちが) より前に(Sophisticated)
  • 国内のITインフラの「当たり前」になることを目指します。
  • 鮮度を保ちながら、一歩踏み込んだ対応もします。
  • フロンティア精神を持ちます。
  • グローバルな価値観にします。
(お客様が)(私たちが) より身近に( Reachable )
  • 鮮度を保ちながら、インプット/アウトプットも増やします。
  • 鮮度を保つため、コミュニケーションを積極的にします。
  • お客様の夢を叶えます。

私たちがこのメッセージを作ったときには、目的を見失っており、作ることが目標になっていました。汎用的になりすぎていて、IDCFクラウドのコンソールの開発から離れたものになってしまったのです。
なぜUXガイドが必要だったのかを思い出し、軌道修正する必要がありました。そして、原点に立返り、自分たちが作るプロダクトの目標に言い回しを変えていきました。

まとめ

自分たちが作ったプロダクトを評価するのはとても難しいです。個々の評価はさらに頭を悩める問題ですよね。
UXガイドは成果物の評価を明確にしてくれるツールだと考えています。
皆が気持ちよく働けるためにも、メンバーに共有し、常に意識してもらうことが大切です。
そして、何度も練り直し、作り上げたIDCFクラウド UXガイドがこちらになります。

ユーザーが、より快適に(Constant)
  • いつでも快適に使えるように、確実で、シンプルで、レスポンスが速いUIを追求する。
  • 想定外の動きがないようにする。
  • 必要なときに、必要な行動(操作)がわかるようにする。
  • 一貫性のある体験にする。同じ機能で異なる体験(UI)を作らない。
  • 使いにくいままでコピーしない。使いにくいままで放置しない。
ユーザーが、より身近に(Reachable)
  • 利用環境や利用場所を限定しない。
  • 説明は簡潔に。言い回しに気をつける。
  • 状況を分かりやすく理解でき、安心して使えるようにする。
  • 必要な情報が表示されないことによる損失を与えない。
ユーザーが、より前に(Sophisticated)
  • 要望の背景を理解し、期待以上の体験を提供する。
  • サービス間の連携を損なわず、クラウド全体の使いやすさを高める。
  • サービスの機能要件を満たすように努力する。
  • 作業を必要以上に増やさない。作業以外の時間を増やせるようにする。

いかがでしたでしょうか。
IDCFクラウドでは一緒に働ける仲間を常に募集しています。
自分も子育てしながら働いているのですが、個々のスケジュールで自由に働ける環境が整っています。
興味を持たれた方は、是非エントリーしてみてください。
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