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JANOG48 Meeting参加レポート

はじめまして、エンジニアリング本部開発部の見﨑です。 本記事は7月14日〜16日に行われたJANOG48 Meetingの参加レポートです。

JANOG Meetingとは

JANOG(JApan Network Operators’ Group)が主催する日本のネットワーク運用者の集いで、年2回イベントが開催されています。本会議の参加者が1500人を超える非常に大規模なイベントではあるのですが、あくまで議論が中心ということで「カンファレンスではなくミーティング」という点が特徴的です。前回のJANOG47は完全オンラインの開催でしたが、今回は現地(岐阜県大垣市)とオンラインのハイブリッド開催となりました。本記事では、私がオンラインで視聴したいくつかのプログラムについて簡単にレポートします。

レガシー組織における運用標準化に向けた取り組み

www.janog.gr.jp レガシー組織(運用チームごとの個別最適化が進み、全体最適化が難しくなった組織)において、チケットシステムの移行をきっかけに運用を標準化し、定量的に評価可能な状態に持っていく、という取り組みの紹介でした。

私も24時間365日の運用現場の経験がありますので、“複数のイベントを並列で対応している際のリアルタイムなチケット記入が困難”だということ、チケットは事後にまとめて記入する傾向があることから“チケットに記録されたオープンからクローズまでの時間をKPIとして利用できない”という2点は頷けるものでした。

この解決策として取り組まれていたのが、チケットシステムを経由して作業カタログを呼び出し、作業とその記録を行うというものでした。業務のヒアリングから作業カタログを作成し展開する…とさらっと仰っていましたが、想像するだけでもかなり大変そうで、よく運用開始まで漕ぎ着けられたなぁ…と素直に感心しました。

まだ徐々に範囲を広げている段階ということでしたので、多くのチーム・作業がカバーできるようになった頃にまたお話を伺ってみたいですね。

EVPN Anycast Gatewayを商用導入した話

www.janog.gr.jp 前回のJANOG47でNTTリミテッド・ジャパン株式会社の川上さんが講演された内容の続きです。 EVPN MultihomingとAnycast Gatewayを利用したFirst Hop Redundancyは技術的にも面白いのですが、この発表では導入に至るまでの検証や監視が主題でした。

商用展開している全種別のエンドノードと同じものを使った検証のほか、高負荷時の不具合を見つける検証、何度も同じ試験を繰り返し実施しレアな不具合を見つける検証、といった形で必要なことを高いレベルでキッチリこなしているという点が素晴らしいと感じました。また、RENATで試験を自動化し、断時間の測定もツールで自動化、配線の変更もロボットを使うなど、大量の試験を実施するための取り組みがとても興味深かったです。手作業での試験はどうしても工数や単純作業の繰り返しによる精度低下がネックとなってしまい、妥協せざるを得ないことも少なくないので、このような仕組みは非常に重要ですね。

High Functional Cloud NFV System Design and Implementation at LINE Cloud

www.janog.gr.jp LINEのプライベートクラウド向けにネットワークサービスを提供するNFV基盤についての講演でした。LINEは過去にもさまざまな挑戦的な試みを発表しているため、私が最も楽しみにしていたプログラムでもあります。

発表では、プライベートクラウドに提供するネットワークサービスをOpenStackのVMで実現し、そのコントロールプレーンとしてKubernetesを用いるというアーキテクチャが紹介されました。私はKubernetesをコンテナのオーケストレーターとしか捉えていなかったので最初は混乱しましたが、質疑を通じて「ネットワークサービスを提供するVMのDesired Stateを維持するための仕組みとしてKubernetesを利用する」ものだと理解できました。その理解の下で資料を読み返すと、これも一種の「宣言的ネットワーキング」だ感じましたので、とても示唆に富んだ発表内容でした。質問にお答えいただいた発表者の城倉様、どうもありがとうございました。

さいごに

JANOG Meetingは地方で開催されることが多いため、出張が不要なオンライン開催は便利な半面、業務が差し込みで入って集中できなかったり、懇親会等で発表者とディスカッションできないというのが残念なポイントだと感じています。次のJANOG49 Meetingは来年1月に鹿児島での開催となります。現地で参加できるようになっていることを切に願っています。

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